はじめに。
今回は、ホリエモンこと、堀江貴文氏の著書、「ゼロ」をレビューしたい。
筆者が思うに、この本は数ある堀江さんの著書の中でも、ひときわ異彩を放っていると思う。
なので、今までホリエモンさんに対して、あまり興味が無い人、またはどうも好きになれない人にも読んで欲しいと思う、著書の1つである。
堀江さんと言えば、未だに「時代の寵児」としての印象や、イケイケの守銭奴(!?w)的なイメージが多い人も居ると思う。
しかしこの著書は、自身が逮捕され、収監された時の前後の思いを中心に書かれていて、少し普段と毛色が違ったタッチで描かれている様にも思い、非常に興味深い一冊だ。
2013年とけっこう前に出版された本になったが、今読み返しても、その文章の鮮度は良い。
筆者も事ある毎に、読み返している。
このレビューを読んで、皆さんもぜひ一度手に取って、読了して頂きたい。
「そして僕は逮捕され、全てを失った」
ホリエモンが、「証券取引法違反」で逮捕されたのは有名な事実であるが、その時、彼がどんな思いでいたのかを赤裸々に語っている。
全てを失った彼が、拘置所の独房で「嗚咽号泣」していたなんて、誰が想像するだろうか!
孤独な時計もない密室で過ごす中で、彼は、次第にナーバスになり、睡眠薬や精神安定剤に頼る事も増えていたと言う。
いまの「完全復活」状態を見ても、私はこれを読むまで、到底、想像もしなかった。
常に、完全無欠。時代の寵児。 歯に衣着せぬ物言い。
そんな印象しかなかった彼は、収監されている間も、何とも無く平然と過ごしていたかと、勝手に想像していた。
当たり前だが、彼も、人間なのだ。
それでも彼は、罪を認めず無罪を主張し、調書にサインをしなかった。
「こんなことなら、いっそサインをして、とりあえずここから出よう」・・・、そんな思いを押し殺して。
全く寝れないそんな日々の中、1人の刑務官との心温まるエピソードも書かれている。
筆者は、このエピソードが大好きだ。
「どうしても寂しくなったら、話し相手位にはなるよ。」
そんな言葉をかけてくれた刑務官に、堀江さんは涙が止まらなかったという。
そして、叶わないが、いつかお礼を言いたいとまで記している。
勝手に想像していた、完全無欠「堀江貴文」とは全く異なる、1人の人間「堀江貴文」がそこには感じられるのだ。
どうしようもなく、独居房で涙していた堀江さんなんて、知る由もなかったし、その時の彼の気持ちは誰もが知りたいはずだろう。
そんな一面も読み取る事が出来るこの「ゼロ」はやはり、異彩を放ち、良書と言えるだろう。
福岡の田舎である家庭環境からの脱出、東大へ。
堀江さんの家庭環境に関しても多く語られている事が、この著作の読みどころである。
「せからしか!」と言う言葉と共に平手打ちが飛んで来る、父。
時には、胸元に包丁を付きつけてくるヒステリックな、母。
そんな家庭環境の中、たった一度の家族旅行で彼は大都会「東京」を訪れ、その規模に衝撃を受ける堀江少年。
「ここから脱出するのには、『東大』しかない。」
彼はそう思うのである。
私立に行く学費など出してもらえる様、説得なんか出来るはずもない。
だったら国立でナンバー1の東大だ。
彼は言う。
「勉強とは、大人を説得する、絶好のツールだ」と。
ここでは、後にも語られる「没頭すること」の大切さも記されている。
「受験勉強が好きだから、没頭した」のではなく、「没頭したから、受験勉強が好きになった」のだと。
「まず、没頭せよ」と。
何か勝手に「自分の好きな事だけ」を取捨選択し、効率よく生きている言う、筆者の勝手なイメージが、この様なエピソードをはじめ、この先のこの著書の内容でどんどん覆されて行くのである。
小さな成功体験を与えてくれた、「ヒッチハイク」。
東大での生活で、日本において研究者の置かれた状況に幻滅した彼は、「麻雀部屋」に入り浸る日々を過ごす。
そんな中、友人に誘われたヒッチハイクの旅が、今の人生にも大きな影響を与えているという。
全く知らない人にいきなり声をかけ、図々しいお願いをするヒッチハイクは「『小さな成功体験』を積み重ねる」大切さ、として彼の人生に大きく影響を与えたという。
「目の前に流れて来たチャンスに、躊躇なく飛び込める勇気」、「挑戦を支えるノリの良さ」。
今の彼を作る要素として影響したのは十分に頷けるエピソードで、読んでいても、本当に面白い。
「塀の中にいても、僕は自由だった」
「『やりがい』とは見つけるものではなく、自ら作るものだ」と、彼は言う。
彼が懲役中に与えられた最初の仕事は、「無地の紙袋をひたすら折っていく作業」だったと言う!
一日ノルマは50個。
彼はそんな中、この仕事ですら「没頭」し、「どうやったらもっと上手く、早く作業が出来るか」を、常に考え行動したと言う。
工夫が実り、どんどんと作業が早くなっていくと、素直に嬉しいし、楽しくなってくる。
これが「仕事の喜び」だと言う。
筆者が、この著書で最も印象深いエピソードがこれである。
堀江さんと言うと「好きな事だけやれ」と言う言葉の印象が独り歩きしていて、どうも誤解されやすいが、その「好きな事」とは、どいう事を言っているのか。
この本では、その辺りまで知ることが出来るように思う。
「『与えられた仕事』、を『作り出す仕事』に変えていく」。
「やりたいことが無い」と言うのは、「最初から出来っこない」と思っているからであって、物事を「出来ない理由」から考えるのではなく、「出来る理由」から考えよ、と。
彼の金言が、この本の中には溢れているのだ!
なんとも、服役中の労働まで赤裸々に語り、それでも彼はそれを一つの「仕事」として真摯に向き合い、そのエピソードが語られているなんて・・・。
本当に魅力ある著書だと、私のこの稚拙な文章でも、少しは伝わるはずだと信じて止まない。
最後に。
あまり、あらすじの様にエピソードをここに記しすぎても、読んだ時の楽しみが無くなってしまうのも申し訳ないので、この辺にしようと思う(笑)。
どうだろうか。
この記事を読んだだけでも、かなりの今までの「ホリエモン」のイメージと異なり、発見があり、この著書「ゼロ」に興味をもって頂けたのではなかろうか。
いつものギラギラした「ビジネス論」も魅力だが、堀江さんの育ってきた家庭環境や、収監された時の孤独、そしてそんな中でも「働きたかった」と吐露する、この著書の魅力は計り知れない!
僕たちはやはり成功者をみて、いつも無意識に何かどっかで、宝くじの当選者の様なラッキーマンとしてや、「どうせ自分とは違う、生まれつき差のある人間」と思いがちだ。
しかし、この著書の中の、堀江少年は、九州の片田舎に育ち、私立大学を受験したいとも言えない家庭環境で育ってきた、ごく普通の少年から始まる。
そして、逮捕、孤独・・・。
そこから彼が学んだこと、感じた事が赤裸々に語られている。
ぜひ、皆さんも一度手に取って、読んで頂きたい。
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