「演劇プロデューサーという仕事」著・細川展裕 レビュー!

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「演劇プロデューサーという仕事」著・細川展裕 レビュー! 劇団・演劇・芝居・役者
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はじめに

皆さんは、「劇団☆新感線」「大人計画」「第三舞台」などを観劇したことがあるだろうか?

もしくは、その様な有名劇団に憧れて、ご自身が劇団員になったり、俳優を目指したりしたことが有るだろうか?

ここまで読んで、少しでもピンっと来た人は、ぜひとも、この本を読んで欲しい!

いや、ピンと来なかった人でも、劇場関係や、お笑い、ミュージシャンetc・・・、全てのステージに関わる人たちに読んで欲しい!

プロデューサーと言っても、スタッフであるから裏方である。

そんな裏で興行を支える細川さんの、一大人生劇場である。

その顔をご存知の方は少ないかもしれないが、もちろん業界では超有名な方である。

実は、筆者も以前、劇団員をしていて、何度もお逢いして、めちゃくちゃお世話になった人物だ。

今や、しがないサラリーマンになったわけだが、

「あの頃の細川さんは、こんな思いで、こんなに苦労して劇団と言うものを形にしていたのか・・・」

と感銘とともに、感動すら覚えた。

全てのステージに関わる人々に、そして、興業の裏側を興味本位で見てみたい方も、ぜひとも読んで頂きたい。

めちゃくちゃ良書なんですけど、あんまりレビューも無いようですので・・・。

ユーモアあふれる文体(おやじギャグ満載w)で、一気に読めますよ!

細川さんの人間力と共に語られる、演劇への道・・・。

この本の帯には、大人計画の宮藤官九郎さんが、

「こんなにガッツリ自伝とは思わなかった。(中略)細川さん、全部、言っちゃったね」

と記してあるように、まさに細川さんの人生を通して激動な演劇界を突っ走ってきた舞台裏が描かれています!

冒頭は、小栗旬さんや古田新太さん、ムロツヨシさん等、著名人との楽屋トークから始まり、内容は、愛媛県の片田舎で育った幼少期から語られる。

正直、表舞台の方ではないのだけれど、そんな方の自伝が、こんなに面白く読めるのにはやっぱり、文章力がおありなんだと思います。

今や、日本1と言って良いほどの演劇プロデューサーの細川さんですが、

けっして、最初から演劇の道に関わっていたのではなく、

沢山の人との出会いがあり、著名人たちをステージに上げるまでにいたったのが解ります。

保証人になってしまった祖父のために「夜逃げ」を経験されたり・・・、けっして裕福ではない誰もが自分の経験重ねてしまう幼少期の物語も、とても興味が惹かれました。

鴻上尚史さんとの出会い。熱狂の第三舞台のプロデューサーへ!

レコード会社に勤めた細川さんは、中学時代の同級生である、鴻上尚史さんと再び出会います。

鴻上さんは当時、筧利夫さん、勝村政信さん、池田成志さんなど、数々の俳優を抱えていた劇団「第三舞台」の主催である。

「劇団の制作を手伝って貰いたい」と言う鴻上さんに、

「その仕事はモテるのか?」と問う細川さん。

対して鴻上さんは、「当たり前だろ!」

そんな、モテると言うことだけで、会社を辞めて、第三舞台を手伝うことになりますw。

もちろん最初はビジネスとして全く成り立っていない劇団で、アルバイトをしながらの仕事・・・。

そこで、細川さんは徹底的に興業的に利益が出ることを考えます。

ここで、時代の波と、「第三舞台」が夢の様なマッチングをするんです。

ご本人もこの著書の中で言っていますが、当時の第三舞台は、時代の熱狂の流れに完全に乗る事になったそうです。

増えていく、観客。

行列をいかに捌くかに悩まされながら、動員も増え続け、遂には海外公演まで敢行します。

ある種、この海外公演が劇団の分岐点となり、突っ走って来た後の疲弊感が語られます。

そんな中、鴻上さんの海外留学などもあり、舞台は新感線へと移っていきます・・・

興行師として走り抜ける、「劇団★新感線」時代。

ご本人曰く、

『うまいこと「第三舞台」から「新感線」へ乗り換えたね。』

とよく言われるそうですが、決してそんなことは無いと。

その頃の新感線は、累積赤字と戦いながらの自転車操業だったと言います。

劇団員に初めてギャラを払ったのが、なんと旗揚げから19年後!

著書でご本人は、

「22歳で就職した若者が、41歳のオッサンになる頃に初めての給料・・・、普通辞めるだろ!?役者ってバカなの!?」

と語っています(笑)。

そこからは、大手制作会社との共同プロデュースなども交へながら、興業として成立さすために電卓をはじき、もっと多くのキャパへ、もっと大きな劇場へと、舵を切って行きます。

もちろん失敗したら、大変なことになるわけですから、本人の文章からも「ビックリお仰天の介!」と繰り返し語られw、手に汗握る緊張感が伝わってきます。

動員を獲得するための仕掛けのお膳立てを、プロデューサーとしていかに動いてきたか、これも赤裸々に語られていて、表舞台では計り知れない物語が知れます。

原作者の先生(高橋留美子さん)との交渉や、著名人とのキャスティング(市川染五郎さんや、天海祐希さん、ジャニーズの面々)など、打ち上げに参加しまくるところからはじまり、どぶ板営業の積み重ねも語られていきます。

キャパも3万人⇒5万人へ!

チケット代も1枚1万円になり、5億円規模の興業へと膨れ上がるその過程が、事細かに語られます。

筆者が好きな、両親とのエピソード

そんな華やかしい世界の舞台裏で、忙しくなる細川さんですが、ご両親の介護の問題が出て来ます。

愛媛と東京。

決して近くない、この2つの町で、

細川さんは時に東京へ呼び寄せ、時に自分が愛媛に返り、ご両親の介護をしながら、最終的にはお二人の最後を看取る事になります。

これは誰しもいずれ経験することですから、本当に心が打たれました。

東京と言う街に呼んで、一緒に暮らせればそれで、済むのか?

本当に、両親はそれで幸せなのか?

読んでるこちらも、考えさせられます。

そして、ウルっと来ちゃいました・・・。

そして、物語は、細川さん自身の引退、終活へと語られていきます

細川さんの人生に、こんな裏舞台があったなんて、この本で初めて知る事が出来ました。

とてもステキなエピソードが満載なんです。

スターシステムの苦悩。

もうひとつ、この本で気になった事は、細川さんから語られる「スターシステム」に関しての苦悩です。

著名人をゲストに呼び、とても大きな劇場で、豪華セットに派手な照明と音響でまくしたえてる、大興業のこの「スターシステム」

しかし、これが、いわゆる「芸術」とか「アート」と言う側面で、世間は全然評価してくれないらしいんですね。

簡単に「商業演劇」としてかたずけられ、「賞」などとは無縁だと・・・。

しかし、とんでもない数のきっかけで、一瞬のうちに変わる舞台美術や、それを支えるスタッフ・・・、これは十分、素晴らしい芸術ではないかと。

ましてや、興業をする以上、きちんと収益を考え追及して、雇用を生んでいる。

「色物扱い」されずに、これはきっちり社会貢献のひとつとしても評価されるべきではないかと。

そうか、そんない思いがあったんですね、細川さんと・・・。

実際そんな苦悩があったのかと、目からうろこです。

そんなエピソードも、筆者としてはとても注目すべきポイントとい思いました。

さいごに

いかがだったでしょうか。

この本には「対談」コーナーもあり、それもとても面白いです!

「お前はなぜおれを誘ったのか」 細川展裕×鴻上尚史

「役者と演出家とプロデューサーの話」 古田新太×いのうえひでのり×細川展裕

この豪華な対談は、一度、全部最後まで読んでからまた読み返すと、面白さ倍増です!

「第三舞台」「劇団☆新感線」はなぜヒットしたのか・・・

すこしでも演劇や劇場に関わった方や、これからその世界を目指す人とって、必読本と言えるでしょう。

ぜひ、手に取って、読んでみてください!

 



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