はじめに。
今回ご紹介したい本、本坊元児さんの著書、「プロレタリア芸人」。
「苦しい時、どん底の時に読みたい本」とタイトルを記しましたが、
決して自己啓発的な、幸せ探しのヒントを得れるような内容では、ありませんw!
この本は、お笑いコンビ「ソラシド」のボケ本坊さんが、
売れない芸人としての、有り余る「苦しさ」や「苦悩」、「貧しさ」、そして「過酷な肉体労働」の日々を綴ったエッセイです。
しかし、そこは芸人さん。
痛々しくも、ユーモアにあふれ、そしてどんなに苦しくても、そこを生き抜く姿が描かれていて、
本当に「読み物」として秀逸だと思っています。
自身が苦しい時は、とても勇気づけられました!
2015年初版ですから、けっこう前になりますが、
なぜ、この本がもっと話題にならないのか、不思議で仕方ありません。
当時、本坊さんのツイッターでの苦悩の呟きが話題になっていました。
「今年、61日しかお笑いしてへんやん。あと10ヶ月なに?」
「テレビに出るよりもスタジオのセットバラした方が金がいい。みんな損してやがる、ざまあ芸能人」
「漫才0円バイト8800円なんやこれ」
「ドキドキしてきた。生活が破綻しそうでドキドキしてきた。」
(笑)。
そして、満を持して出されたのが、この「プロレタリア芸人」なんです!
私も劇団時代の苦悩を、シリーズで記事にしましたが(※参考記事⇒芝居・役者・舞台の魅力と苦悩~僕の演劇人生、劇団日記~その①【旗揚げ】)、
芸能関係の道で苦労した人、そして今なお夢半ばで下積みや苦労している人は、なお更、楽しめるでしょう!
上阪⇒上京。
仲間たちが次々と、東京へ。
本坊さんは、大阪吉本NSC出身。
愛媛県で育った後、大阪に出て、相方の水口尾さんと共に、コンビ「ソラシド」を結成します。
当時、仲良かった芸人仲間として、麒麟の川島さん、アジアアン馬場園さん、とろサーモン村田さんなどとのエピソードが語られます。
仲の良かった芸人の友人たち。
後々も芸人仲間さんとの温かいエピソードが出て来ますが、そこも読みどころです。」
最初は皆バイトしながらも、仲良く集まって過ごしていますが、次々に仲間が上京していきます。
「自分も東京へ行ったら何とかなるんじゃないか?」
と、30歳を越えて大都会、東京での本坊さんの挑戦が始まります。
洋和ワークスへ。
30歳越えて、東京で仕事を探すのには苦労する本坊さん・・・。
次第にお金は無くなって行きます。手元には、2,000円しか残っていません。
「年齢不問」という仕事をようやく見つけ、そこで面接。
その仕事は「洋和ワークス」と言う、建設現場などでの肉体労働をする、日払いのバイト。
しかし、仕事初日を迎えるにあたって、前日に作業着やヘルメットを揃えるのに8,000円かかるといわれ、前借させられます。
8,000円は、1日分の給料。
「明日は、タダ働きだ。ボケが。」
(笑)。
そんなスタートで、「洋和ワークス」での仕事が始まるのです。
現場が目に浮かぶ、描写。
現場、現場でのエピソードが秀逸。
日払いの肉体労働なので、現場現場でのエピソードの描き方が秀逸なんです。
実際はもちろん著書で読んで頂きたいのですが、軽く記しますと・・・。
●一生懸命働いていたら、「お前は誰だ?」と途中で言われ、全く違う現場でタダ働きしてした話。
●解体の現場は、空爆の様に物が落ちてきて、ガラスの粒子が次々と皮膚に刺さる話。
●唯一の楽しみ昼休憩。なけなしのお金で作ったお弁当のハンバーグがまさかの飛んできたトンビに取られた話。慌てて追いかけたら、トンビは海に落としてしまったそうです。
「せめて、食べてくれんか、ハンバーグ」
(笑)、などなど、読んでいても、辛く切なくもありながら、
ユーモアがあってどんどん読めちゃいます!
むしばまれて行く体。
やはり体力勝負の仕事。
どんどん体が悲鳴をあげて行き、医者に行けば「交通事故されました?」と言われてしまう始末。
病院や整体にいくと、稼いだナケナシノお金も無くなってしまう・・・。
自分はいったい、何のために働いているのか・・・。
エイサー団体への参加。
麒麟の川島さんから貰った三線を弾いているうちに、
エイサー(沖縄の伝統芸能の舞踊)団体に興味を持ち、
何故か入会金を払い参加してしまうエピソードがあります。
「売れて無くたって、趣味を持っても良いじゃないか」w
彼女が出来るかなと思ったけど、そこにはイケメンの講師の先生。
みんなその人に夢中で、結局、何も起こらない・・・。
先の見えない人生の中に面白エピソード。
増えていく借金・・・。
これからどうなるんだろうという不安も、生々しく、切なく、描かれます。
そして引き続き、現場で合う色々な人や危ないエピソードが次々と痛々しくも、面白く描かれて行きます。
横浜のビルの地下の点検で真っ暗の中、ヘッドライトが切れ、迷子に!
そして、何とか脱出したのは良いが・・・、
あ、いやいやこれ以上書くと、書評ではなく、ただのあらすじになっちゃうんで、
後は皆さんでぜひ手に取って読んでください!
最後は、未来の想像する自分の姿。
この本の最後に描かれているのが、なんと2030年の本坊さんのエピソードです。
もちろん、まだ見ぬ未来のことですから、作り話ではあるのでしょうが、
芸人を辞めサラリーマンになり、結婚もしたと仮定される2030年の本坊さんが、
これまでの芸人人生を振り返る描写で描かれています。
少し変わったアプローチですが、これがまた、切なくて、いい終わり方なんです!
さいごに。
夢を追うことって、何なんでしょうか?
人は何のために生きているのでしょうか。
お金は全てでは無いけれど、お金は大事。
人間、働かなくては食べていけないから、生きていけない。
こんな当たり前の事ですが、深く、深く考えさせられる、私のフェイバリットブックに違いありません!
本坊さんのYouTubeチャンネルで、秀逸な替え歌のPVを発見しました!
これみたら、読むっきゃ無くなるでしょう、「プロレタリア芸人」(笑)!👇
現在、本坊さんは、山形県の住みます芸人として、引き続き、お笑いの世界で頑張っていらっしゃるようです。
またどこかで、新たなエピソードを聞きたい!
プロレタリア文学「蟹工船」に勝るとも劣らない、プロレタリア芸人の世界が、この本の中には詰まっています!
僕は家にあった海苔を食べつくし、食塩も食べつくしました。
喉の渇きにびっくらこいた。
やっぱり駄目じゃないか。情けなくて涙が出てくる。
(略)
『死ね、死んでしまえ』
「プロレタリア芸人」著・本坊元児
※追記※本坊元児さんの新著が登場!「脱・東京芸人~都会を捨てて見えてきたもの」こちらも必見!
本坊さんの新著が発売されています!
こちらも大変楽しく読ませて頂きました!
その後、「山形住みます芸人」となって生き延びる本坊さんの壮絶田舎暮らし!
日本テレビ『人生が変わる1分間の深イイ話』密着で話題にもなった、不器用でも実直に生きる本坊さんの面白人生は続編でも健在です。
プロレタリア芸人を読んだ方は必読!↓
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